予防歯科
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生涯を通じて健康な歯でいるために!
「予防歯科」という診療科目をご存じですか?
予防歯科というのは、虫歯や歯周病などになってからではなく、なる前の予防に重点を置き、ご自身の歯を一生使い続けることを目的とした診療です。
欧米では予防歯科はすでに常識となっていて、定期的に歯科医院で定期健診やメンテナンスを行い、セルフケアだけでなく歯科医師や歯科衛生士と共にお口の健康づくりをしています。
近年、日本でも予防歯科は注目されはじめ、これからは歯科治療のカギとなる分野ともいえます。
予防歯科ってどんなことをするの?
入れ歯やインプラントなどの技術が進んだとはいえ、ご自身の歯に勝るものはありません。予防歯科の基本は、歯を虫歯や歯周病などのトラブルから守ることです。
そこで大切なのが歯科医院での定期検診やメンテナンス。歯並びのチェックや唾液検査などで歯の状態を把握し、PMTC(歯のクリーニング)、フッ素塗布、歯みがき指導などをおこないます。
唾液検査
唾液を調べることで虫歯にかかりやすいタイプなのかどうかを判定します。どんな予防歯科治療が必要なのかを判断するのに必要な検査です。
PMTC
PMTCとは、プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニングの略。毎日念入りに歯みがきしているつもりでも、みがき残しはあるものです。特に、歯の間や歯と歯茎の境目の汚れなどはみがき残しが生じやすく、虫歯や歯周病の原因となります。そうした汚れを、歯科医院の専用の機械を使って落とします。
フッ素塗布
フッ素には、①エナメル質の修復を促進する、②歯の質を強化する、③虫歯を引き起こす細菌の力を弱めて酸がつくられるのを抑える、という働きがあります。
そのため、フッ素を歯の表面に塗ることは虫歯予防にはとても効果的で、定期的なフッ素塗布がおすすめです。
歯みがき指導
歯科医院での予防歯科治療をより効果的にするには、日々のセルフケアが大切です。そのための歯ブラシの選びかたから持ちかた、力の入れかたなど、おひとりおひとりのお口の状態に合った歯みがき方法をレクチャーします。
赤ちゃんからシニアまで! みんなで予防歯科
お口の中の状態は人それぞれ。年齢などでも重点を置くべき予防歯科は違ってきます。おひとりおひとりの歯の状況に合わせた予防歯科治療をすることが大事です。
妊婦さんの予防歯科
妊娠中は、ホルモンバランスが変化し、歯ぐきの腫れや出血、歯周病の発症・進行などの症状が出やすくなります。また、つわりで歯みがきがしっかりできなかったりして虫歯になる可能性が高くなります。
お母さんに虫歯があると、生まれてきた赤ちゃんに虫歯菌を移してしまうことにもなるので、妊娠期間中のお口のなかの健康は大事。ご自身だけでなく赤ちゃんのためにも、安定期に入ったら歯科医院で適切な予防歯科治療をすることをおすすめします。
乳幼児の予防歯科
母乳やミルクから離乳食へ移行、歯がはえてくるなど、月齢によって変化していく乳幼児のお口のなか。お子様のお口の状況に応じて、歯みがきのしかた、適切な飲食の習慣、哺乳瓶の使用やおしゃぶりに関する指導などをおこないます。
さらに、口腔内の清掃やフッ素塗布、またお口の中が虫歯になりやすい環境になっていないかなどの定期的な検査などもおこないます。乳幼児の頃から歯科医院に通うことで、その後の歯の治療への恐怖心も軽減されます。
子どもの予防歯科
乳歯がはえはじめる生後6か月から歯並びが完成する16歳くらいまでは、歯の健康にとって非常に大切な時期です。この期間はお口の中の状況がどんどん変化していくため、歯科医院での定期的な検診はとても重要になってきます。
虫歯の有無はもちろん、不正咬合を誘発する因子がないかなどの歯並びに関するチェックも大事です。
さらに、おひとりおひとりに合った食生活指導、歯みがき指導もおこない、必要に応じてフッ素塗布、シーラント(※)などの予防処置もおこないます。
(※)シーラント 虫歯の原因となる歯の細く深い溝を歯科用レジン(プラスチック)で埋めて、その部分の虫歯の予防をします。 奥歯など歯ブラシが届きにくい場所に有効です。
中高生の予防歯科
自分たちで買い食いをする機会が増え、ダラダラ食べなど、食事回数が増えてしまうことによって虫歯が増えてしまうこの世代。部活中の甘いスポーツドリンクや勉強中のお菓子などにも注意が必要です。
この時期は歯茎が腫れたり、歯茎から出血したりする「思春期性歯肉炎」が起こりやすく、虫歯のリスクも高まります。部活や習い事、受験勉強などで忙しい時期ではありますが、そんな時だからこそ歯の健康がおろそかになりがちですので、意識的に歯科検診を受けましょう。
PMTC(歯のクリーニング)で歯の汚れをしっかり落とし、虫歯や歯周病にかかりづらい口腔環境をつくり、さらにフッ素塗布、歯みがき指導などでお口の中の健康を守ります。
大人の予防歯科
日本人の成人の8割が歯周病にかかっているか、その予備軍だといわれています。そして、実は歯周病は30代くらいからはじまるとされ、自分では気づかないうちに症状が進行します。虫歯はもちろん、歯周病で歯を失うことがないよう、予防歯科治療は非常に大切です。
大人には効果がないと思っている方も多いフッ素塗布ですが、大人にも効果があります。定期健診はもちろん、フッ素塗布やPMTC(歯のクリーニング)を定期的におこない、虫歯や歯周病を予防しましょう。
シニアの予防歯科
歯の健康は、身体全体の健康につながります。特にシニアにとって、虫歯や歯周病は身体の不調にも結びつきやすく、より予防歯科が重要になってきます。
たとえば、虫歯や歯周病などで歯を失い、歯の本数が少なくなると噛むことが困難になるばかりでなく、食べられるものが限られてしまい、高カロリー・低栄養になりやすくなります。
また、噛むことは脳を活性化させますが、噛めないことで認知症になりやすいという危険性も出てくるのです。さらに、虫歯や歯周病を放置していると脳梗塞や心筋梗塞になる危険性が高まるともいわれています。
加齢により唾液の量が減少するため、虫歯になるリスクが高まることなどもあり、シニアこそ予防歯科治療を積極的に受けることをおすすめします。
お子様の歯の健康を守るために!
お子様の歯の健康を守るのにまず必要なのは、毎日の歯みがきです。でも、それだけでは虫歯は防止できません。食事回数、砂糖の摂取、唾液の質も虫歯発生に関与します。
お子様の食生活を見直し、正しい歯みがきを心がけましょう。
1、おやつは規則正しく、適切に
おやつは、3歳まではできるだけ甘くないものを与えてください。おやつというと甘いものと思いがちですが、甘くないおやつはいろいろあります。野菜や食パン、おにぎり、無糖のヨーグルト、果物もおすすめです。
飴、クッキーなどのように歯に長く残りやすいものは避け、虫歯の原因菌にとって栄養源になる砂糖を多く含まないおやつを選んでください。
おやつの目安は1日1回から2回まで。エネルギー量は1日当たり1~2歳で100~150kcal、3~5歳で200kcal程度です(文献により異なります)。
水分は水やお茶で与えましょう。牛乳を水分替わりに頻繁に飲むと食事に影響します。
ヨーグルト1個 100g | 50~70kcal | 牛乳 100ml | 67kcal | あんぱん1個 35g | 100kcal |
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イチゴ M 5個 63g | 21kcal | スポーツドリンク 100ml | 19~25kcal | クッキー1枚 9g 直径5㎝ | 約50kcal |
バナナ1本 100g | 86kcal | オレンジジュース 100% 100ml | 42kcal | せんべい1枚 22g | 84kcal |
砂糖は「普段は控えめ、時々どっさり」がおすすめです
甘いものは、正月、クリスマス、誕生日、幼稚園・保育園の行事、来客、家族で外出、がんばった日、お祝いの日などに存分に楽しむように。「特別なもの」と位置付けて与えることをおすすめします。
砂糖を多く含んだものは、たまに食べるなら虫歯の発生にはつながらないものですが、砂糖は料理用以外、毎日必須の食品ではありません。
2、1日最低 2 回の歯みがきをおこないましょう
最低でも小学校低学年までは(お子様によっては高学年まで)、寝る前の仕上げみがきは必要です。永久歯がはえたてのころは虫歯になりやすい状態です。さらに、そのころは歯ブラシが全面に上手に当たらないので、みがけているかを大人が確認しましょう。
虫歯にならない歯みがきのポイント4つ
1.歯みがきの時間
自分でみがけるお子様なら1日2回以上(できれば3回)、1回3分、1日合計10分以上みがきましょう。「砂時計が終わるまで」、「次のCMが入るまでテレビを見ながらみがく」など、お子様を飽きさせない工夫も必要です。
朝が忙しくみがけなかったときは、夜に長めにみがいて時間を確保しましょう。仕上げみがきの時間はお子様の我慢強さによりますが、可能なら1日1~2回、乳児はササッと、幼児は2~3分とすすめています。
2.みがく順序を決めておく
歯ブラシがきちんと歯の表面に当たっているかが大切です。みがく順番を決めておくとみがき残しを防ぎやすくなります。
3.たまには歯を染め出してみがき残しを確認しましょう
歯みがき後の歯垢が落ちているかを確認するには、ご家庭で歯垢染色液を月1回は使用することをおすすめします。衣類を汚さないよう、エプロンや古いタオルなどを用意し、首の周りにつけてからおこなってください。
通販や一部ドラッグストアなどで入手可能なものを下記に示しました。
こどもハミガキ上手 | イチゴ風味がOKなら使えます。若干他製品より染まりが薄い方がいますが、流しに着いた色は比較的落としやすいです。 |
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プロスペック歯垢染色液 | よく染まり、みがき残しがわかりやすい。流しをよく洗う必要があります。 |
プラークサーチタブレット | 新しく発生した歯垢は赤く、長時間付着している歯垢は青く染まり、2色に染まるので、特に注意してみがくべき場所がわかりやすい。 |
翌日まで口唇の染色が残ることがありますが、そのうちに落ちます。歯ブラシも染まりますがそのまま数回使っていると色が薄くなりますので捨てなくても構いません。
4.フロスのすすめ
3歳以降は乳歯がはえそろいます。この時期より、一番後ろと後ろから2番目との間の歯垢が落ちにくいので虫歯になりやすくなります。しかも虫歯があっても隠れてほとんど見えません。
フロス(ハンドル付でもOK)を日々の仕上げみがきの最後に、短時間で使用することをおすすめします。
1日のお子様の食生活を書いてみましょう
お子様の食生活を把握して虫歯予防に役立てるために、ときには食べたもの、飲んだものを振り返ってみましょう。2日分、普段の食事内容でよいです。下記の表を参考にしてみてください。
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